日本酒の起源

日本酒は神様のために造られたもの?

日本酒の起源は諸説あり、はっきりとした証拠はないのですが、稲作が日本に伝わったとされる弥生時代が一番有力とされています。当時は『口噛みノ酒』、加熱した米を口の中でしっかりと噛み、唾液に含まれる分解酵素により糖化を起こし、野生酵母により発酵を進めるという製法で日本酒は造られていました。そしてこの口噛みの作業を行えるのは、神社の巫女のみで、できたお酒は神様に捧げられる神聖なものでした。時代が経ち奈良時代には、朝廷による朝廷のためのお酒を造る『造酒司(みきのつかさ/さけのつかさ)』と呼ばれる部署が設けられ、神様に捧げるためだけではなく貴族が嗜むためや、豊作祈願の神事に日本酒は造られた。なんと日本酒が庶民の間で広く飲まれるようになったのはさらに時代を経た室町時代でした。この頃には洛中洛外に300以上の酒屋ができ、日本酒の製法技術も進み、現在の日本酒製法の基礎もできてきました。そして江戸時代にはさらに大衆への日本酒の人気は高まり、商人により日本酒の商品化が進み、普及していきました。明治時代に入っても日本酒の人気と普及のスピードは止まりませんでした。政府はその人気、消費量に目を付け、1875年に酒税制度を施行し、酒税は国の大きな財源になりました。日本酒と日本の歴史、政治には非常に深い結びつきがあります。

広島の日本酒

広島は酒造りには不向きな土地だった

日本の三大酒どころは、京都府の『伏見』、兵庫県の『灘』、そして広島県の『西条』です。そもそも、広島県の西条は日本酒に向かない軟水が湧き出る地域で、酒造りに適していない土地だと言われていました。なぜならアルコールの発酵は、硬水(硬度6~8)に多く含まれるカルシウム、マグネシウムなどのミネラルが酵母となり進んでいきます。そのため、軟水では酵母の餌が足りず発酵が進まなかったため、美味しい日本酒ができませんでした。しかし、そんな状況も1898年(明治31年)に東広島市安芸津の三浦仙三郎氏の『改醸法実践録』の発行により広島の日本酒業界は大きく発展しました。この醸造法は麹を長期的に育てることに着目し、幾度とない改良ののちに、発酵が進みにくい軟水でもおいしい酒を造ることを実現しました。それ以降、軟水で作られる広島の酒は、ふくよかでキメの細かい酒として生まれ変わりました。そして明治40年に東京で開かれた弟1回『全国清酒品評会』で『広島の酒』は『灘』と『伏見』をおさえ最も評価の高い優等賞(1位~5位)の1位と2位を広島のお酒が飾りました。それにより一気に広島の酒は『灘』、『伏見』と並ぶ日本の三大酒どころと名声を博すようになったのです。

SAKE

世界で作られるようになった日本酒

明治時代では酒税は国税の税収第1位となり、勢いを見せる日本酒でしたが、現在日本酒の消費量はピーク時の3分の1に減少しています。日本酒離れという言葉をよく聞きますが、いくつかのアンケート調査等の結果では、日本酒への人気は上位にランキングしており、若者の中での日本酒への興味、関心が高まっています。ただ、明治時代に比べると飲まれるお酒の種類も多くなり、1種類に対しての消費量は必然と減少傾向になり昭和初期に7,000以上あった酒蔵も1,400ほどになっています。酒蔵も日本酒の生産量を維持していくために、世界へと日本酒を発信していく必要がありました。国内の消費量は低迷している日本酒ですが、近年、世界的に日本食のブームが起きており、それに比例して世界的に日本酒の人気も上がってきています。10年に前に比べると日本酒の輸出額は3倍ほどになっています。さらに国内での純米吟醸の製品レベルは最高値に達成しているのではと言われるほどのクオリティの高さということもあり、現在では海外の人が日本の酒蔵に勉強をしにきて自国で酒蔵を構える方も出てきました。今後、日本国内の日本酒情勢だけではなく世界のSAKEの動向も見離せません。

四季と日本酒

季節で変わる日本酒の味わいと特徴

一般的に日本酒造りは、原料となる米の収穫後に行われますが、季節により日本酒は、冬酒、春酒、夏酒、秋酒と呼ばれています。

冬酒(12月~3月)はしぼりたて新酒と呼ばれます。通常日本酒を出荷するときは、2度火入れを行い、保存期間を長くしますが、『しぼりたて』は1度も火入れをせずに出荷されます。そのため新鮮で爽快な味わいが特徴です。しかし火入れを行わないため、酵母が生き続けているので、しばらく冷蔵庫に入れておくとまろやかな味に変化します。
春酒(3月~5月)は花見酒とも呼ばれています。この時期に出荷されるお酒は冬に搾られたものになります。春酒は華やかな香りと上品な甘みで飲みやすい日本酒と言われています。
夏酒(5月~7月)は冬に搾ったお酒を夏まで貯蔵し出荷された日本酒です。貯蔵方法で蔵ごとに味の変化が出てきます。夏はビール!という方もいらっしゃると思いますが、キリっと冷えた冷酒も格別です。
秋酒(9月~11月)と言えば日本酒ファンにはお待ちかねの『ひやおろし』です。夏を超えた秋酒はうまみとまろやかさが増していき、旬の魚と野菜によく合います。『ひやおろし』と『秋の料理』は日本酒ファンにとっては最高の季節です。

日本酒は日本の歴史だけではなく四季とも深い関わりを持っています。日本酒を深く知り体験することで、食が何倍も楽しめるようになります。

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