四季醸造とは1年中日本酒を醸造することです。
日本では元々、四季醸造が行われており、新酒・間酒(あいしゅ)・寒前酒(かんまえさけ)・寒酒(かんしゅ)・春酒(はるざけ)として1年中、お酒が作られていました。ですが江戸時代に、幕府の政策で冬以外の酒造りを禁止することが度々あったため、蔵元が冬以外に酒を作らなくなりました。また、酒の品質は気温の低い冬が一番良いものができたため、品質競争の面からも冬以外の酒造りは一時期廃れてしまいました。しかし、時代が昭和に移り、醸造技術の向上や空調設備が整ったことで細やかな温度管理が可能となり四季醸造は復活したのです。
四季醸造のメリット
- 1回の仕込み量を減らすと小回りが効く
四季醸造をすることで1年を通じて仕込みができるので、1年分の仕込みをまとめて行う寒造りと較べて1回の仕込み量を少なくできます。そのため毎日、仕込んだお酒を分析にかけながら酒造りが行うことができます。また、市場の需要に応じて仕込みの量を変えたり、市場のニーズに合わせた新商品や季節ならでは商品を早いタイミングで投入することができます。
- 年間を通じてお酒を作るので杜氏などの蔵人が成長する
毎日酒造りが行われるので、寒造りしかしない蔵元が1年間に仕込みの回数を数か月で経験できます。ということは四季醸造の場合、年間の酒造りの回数が寒造りよりも何倍も多くなります。その結果、杜氏を含めた蔵人の成長が早くなり、高品質なお酒をつくれるようになるのです。
- 生産性が上がる
江戸から昭和の間の酒造りは季節労働者が従事していました。しかし現在、季節労働者は減少しています。季節労働者に頼るよりは設備の機械化を進めて、1年中機械を稼働させる四季醸造にすることで、生産性を上げることができます
- フレッシュ感
1年中酒を仕込むということは、1年中新酒ができるということです。
四季醸造を行うことでいつでもフレッシュ感のある酒を提供することができます。
四季醸造のデメリット
冬以外の外気温が高い季節に、冷却も行わずに清酒醸造を行うと、雑菌が繁殖したり、醸造中の醪が熱を発するために温度が上がりすぎ、酸が高く辛くなってしまうため。品質のよい酒ができません。
そのため、四季醸造を行うには真夏でも7~8℃の低温を空気調整やジャケット等によりつくりださねばならず、設備投資が必須となる他、空調設備を稼働させるためのコストもかかります。
四季醸造はメリット、デメリットがありますが、現在さまざまな酒造会社があり、形態も多種多様です。四季醸造だからこそ運営できる蔵、四季醸造だからこそ提供できるお酒もあります。生産される背景を感じながら飲むお酒はさらに深い味わいを表現してくれるでしょう。
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