養殖の始まり

先人たちの努力と工夫により発展した広島牡蠣

広島牡蠣の養殖は、文献に『天文年間、安芸国において養殖の方を発明せり』と書かれていることから室町時代の天文年間(1532年~1555年)から始まったと言われています。当時の牡蠣の養殖方法としては、干潟に小石を並べ、牡蠣を付着させることで育成を行い収穫する「石蒔(いしまき)養殖法」や、牡蠣を干潟の砂の上に直接置き成育をさせて収穫する「地蒔(ちまき)式養殖法」が行われていました。しかし生産性があまり高い養殖方法ではなかったため、先人たちは時代と共に養殖技術を発展させていきました。その結果、現在主流の養殖方法である「筏式垂下(いかだしきすいか)法」が発明されたことで広島牡蠣の生産量が急速に伸びました。先人たちの美味しい牡蠣をより多くの人に届けたいという気持ちが養殖方法の工夫に繋がり、現在では広島が日本で1番の牡蠣の生産量を占めています。

恵まれた地形と気候

世界でも有数の牡蠣の生育に適した環境

広島湾は島や岬に囲まれていることで波が静かでありながら、潮の流れも適度にある環境が作られています。そのため筏の破損のリスクも低く、風波や潮流の影響も少ないことから、牡蠣が育成する条件が揃っています。さらに中国山地から流れ出る水には牡蠣の餌となる植物性プランクトン(ケイソウ類)が多く含まれており、島々に囲まれた閉鎖海域である広島湾の中で広島牡蠣は栄養を豊富に摂取することで大きく成育していきます。地形と気候の恩恵を受け広島湾には豊富な栄養分が常に供給されており、長い歴史の中で枯渇させることなく、たくさんのおいしい牡蠣を食卓に届けることができています。その他にも、広島湾では梅雨の時期から夏にかけて流れ込む河川(真水)が海水中に塩分濃度の差による層が作り、『甘い水=少し薄い海水』、つまり低塩分濃度の海水が発生させています。牡蠣はその甘い水を好み、成育促進の1つの要因となっております。広島湾は牡蠣の育成にとって有利な条件が揃っており、最高の育成環境が整っていると言えます。

海のミルク

美味しいだけ終わらない牡蠣の魅力

牡蠣はその美味しさ以外にも、栄養価の高さにも注目され、別名『海のミルク』と言われています。その所以は、ミルク=牛乳と同じように様々な栄養を含んでいることからきており、牡蠣には『亜鉛』『タウリン』『グリコーゲン』『カルシウム・マグネシウム』、その他にも多くのアミノ酸とミネラルが含まれています。亜鉛は、胎児や育児の発育や生命維持に重要な役割を果たしているほか、肝臓、腎臓、膵臓、骨の成長、味覚、免疫と様々なところに必須のミネラルです。その一方、亜鉛が不足すると、成長障害、味覚障害、貧血、食欲不振などを招きます。タウリンは、肝臓の代謝機能の改善、血圧の正常化、血中コレステロール低下に有効で、疲労時の体力回復や気力回復に役に立つアミノ酸の一種です。このように牡蠣は美味しさ栄養価も高さ両方を兼ね備える食材です。間違いなく牡蠣は人に幸せと元気をくれる最高の広島のグルメの内の1つと言えます。